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カクテル職人と呼びたいバーテンダーが何人かいる。こちらの宮本さんもそのひとりだ。宮本さんの作り方はかなり変わっている。というか、みんながナイフフォークで食べている時にひとり箸で食べている感じだ。
宮本さんはシェーカーをほとんど使わない。シェーカーを使うところもミキシンググラスでやる。ミキシンググラスの中の液体に神経を集中させるようにじっと見つめ、バースプーンを回す姿には思わず「武蔵!」と呼びたくなる(笑)。ふつうなら、バースプーンでかき混ぜるのに、氷が溶けるから、早く、短時間でやりそうなところをゆっくり回転させる。でも、できあがったカクテルは不思議と水っぽくない。なめらかだけど硬度のある、宝石のようだと思った。
初めてこの店を訪れたのは1年くらい前。北新地の某店でいかにもバー慣れしてますといった風の男性から「神戸なら[エリクシル ド ロングヴィー]に行かな」と教えてもらっていたが、おそらくはBRIOとかを読んでるような男性ばかりだろうと敬遠していた。「ごはんがまだなんで、軽めの、果物を使ったカクテル」と注文すると「ベースは? 甘さは?」などとあれこれ訊かれることなく「はいはいオッケー」てなかんじで作り始めた。ブレンダーでシェイクし、仕上げはミキシンググラス。その作り方も独特で驚いたが、できあがった、ヨーグルト風味のミックスジュースみたいなお酒がめちゃくちゃ美味しくて、もっと驚いた。
後で聞いたのだが、いろいろ訊かれなかったのは、以前来店したお客さんと勘違いしてたというオチがあった。でも、結果的にこの1杯で、断然この店が好きになった。1杯が美味しければ、もう1杯飲みたくなる。結局、その時は次があったので、2杯飲んだだけだったけど、その2杯目も、ルビーのような美しい色とベルベットのようななめらかさ。と、思わず昔の雑誌に出てくるようなフレーズが飛び出す、衝撃的な美味しさ。店を出る時には「次はどんなお酒を作ってくれるのだろう」と、早くも次の1杯を楽しみにしていた。
(文・溝口久美)
[elixir de Longue Vie (エリクシル ド ロングヴィー)]
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