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Meetsな人の20軒
とかく丼は軽く見られがちなれど。
割烹やレストランなどで食べるのが「料理」ならば、丼は「メシ」である。毎日でも食べられる。
いろんなバリエがあって、一つの店でもカツ丼や親子丼といった食堂の味がある。
いつしか、早くて旨くて安い、の代名詞となった。いつしか、その真ん中の部分がないものになってしまった。
「毎日旨いメシが食べたい」という、人間の欲望を叶えられるはずのものではななかったか。
幸いなことに、関西には旨いメシ、旨い丼の店に恵まれていると思う。その恩恵もいつしか忘れがちになる。
経済や流通や大量消費といった、何だか見えない大きな波のせいで、大事なことを忘れてしまったのではないか。
食べることと人間の欲望は限りなく密接であり、それがゆえにかえって「食べているのを見られるのは恥ずかしい。
一番本能に近い行為だから」という富岡多恵子さんのコラムにあった一文に共感を覚える一面もある。食べることを軽んじて、生きることが楽しくなるわけがなかろう、である。
便利で早い、安いだけでは、「メシ」にもならない。ひょっとしてそれは、空腹感を満たすだけのエサとちゃうか、である。
たかが丼、されど丼。毎日の食でも「今日は暑いし鰻が食べたい」と言いながら、ジュワっと脂とタレが混ざり合う瞬間を想像する。「あのおばちゃんの食堂のカツ丼は、卵のフルフルが旨いんや」と言いながら、カツと卵を一度にかき込む自分を想像する。
そんな想像力やほんの小さな希望や欲望を膨らませることで、自分の中にある力の源がドクドクと脈打つんじゃないか。
一昔前は、当たり前に考えたり感じていたことを、今の街の人たちは忘れているんじゃないか。 思い出させるには、サプリメントでもネットやメールのテキストでもなく、自らの胃袋に問いかける姿勢。
食を楽しむココロしかない。
それを容易くできるのは、街に溢れる丼の中でも「早い、安い、ホンマに旨い」店だけはなかろうか。
ミーツな人のオススメ丼
丼・麺・定食屋でスタンダード丼を知った、船場の味万。
大阪の長堀通りから心斎橋筋を北へ。問屋街とも言える船場の街が広がる。味万は、そんな街で買い物をしたり働いたりする人たちが昼時から夕方にかけて行く食堂である。丼もうどんもそばも定食もある、セルフでお茶を汲むような店だ。ここのカツ丼に一時期ハマったことがある。最初はカレーうどんや、ざるうどんと天むすの定食を目当てに週3回ほど通っていたが、ある日、昭和ひとケタなご婦人が、ワシワシとかき込むようにこのカツ丼を食べていた。あまりに旨そうに食べていたので、「次回は」とココロに決めた。翌日行って注文したが、なかなか出てこない。揚げ物はそこそこ時間がかかるのだ。きっちり通し揚げでやっているのだと思われる。出てきたのはこれぞカツ丼、といった風貌。一枚もんのカツを細くカットして卵でとじてある。甘辛いつゆは、うどんやそばと同じく昆布や鰹のダシが効いている。青ネギが斜めに切ってあり、半熟の卵の中に埋もれている、そんなスタンダードな丼だ。甘めのつゆを使って卵とじにしている分、懐かしい感じがする。玉ネギは半透明を通り越し、茶色でクタクタになっている。その甘さも加わっているのだろう。大きめの口の丼鉢に、口を寄せ、ガツガツとかき込めば、きっちり米粒の立ったメシとカツ、卵が混ざり合う。ソースカツ丼とか、おろしカツ丼とか、変わりカツ丼を出す店があるけれど、ご飯と汁気のバランスが、どうにも気にくわない。汁だく好きではあるけれど、丼の底に汁だまりが出来るほど水気があったり、白ご飯の時点でべちゃついたのはいただけない。米が汁気にふれて、つやつやとなり、白ご飯で食べる時よりも自立してくれるくらいでなければ。
そんな真っ当すぎるほどのカツ丼は、身の回りに一軒あると、「ああ、今日はカツ丼」の気分になった時に重宝する。ある時、旨いもん好きの知人に「カツ丼食べたい」と言われた時、この店を紹介できなかった。その知人が普段、レストランや割烹に行く頻度が高かったからだ。今思えば、何でやろう、である。今なら迷うことなく「これぞ、カツ丼、オレのスタンダードや」と言うだろう。残念ながらその知人は東京へ行ってしまったが、大阪に帰ることがあったら、きっと一緒にこの店のカツ丼をかき込もうとココロに決めている。
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