- 2021.01.19
- 製品・技術
事故事例から学ぶ、故障・事故の未然防止策
さびは塗膜による保護機能を損ない設備の耐久性を下げるほか、進行した場合は流出事故などの要因となるため、日頃から懸念箇所を認識して故障や事故を未然に防ぐ必要があります。
本記事では、腐食しやすい箇所を「構造的要因」と「環境的要因」の2点で把握し、実際の事故事例でどういった点に気をつけるべきか学びながら、故障・事故の未然防止策を考えていきます。
1. 見落としがちな「腐食しやすい」箇所
【1】構造的要因
プラントの腐食は全体に均一に進行するものではありません。湿潤状態になりやすい部位や、塗膜品質(防食)の確保が困難な部位で局部的に腐食が進行しやすくなります。具体的には、部材の格点部やタンクの「天蓋」・フランジや溶接による「接合部」・部材の「エッジ部」などです。
【2】環境的な要因
設置環境によって腐食が進行しやすい設備もあります。例えば、海塩粒子の影響を受けやすい環境・紫外線が当たりやすい環境・雨水が滞留しやすい環境などです。
こうした箇所以外にも、上述の原因が重なって腐食の進行が早まる場合もあり、要因や懸念箇所を日頃から把握しておくことが大切です。
次章では実際の事故事例についてみていきます。
2. 腐食が原因で起きた事故事例
定期的にメンテナンスが行われていても、腐食劣化による事故は実際に起こっています。その多くは、見落としがあったり点検が不十分だったことが原因です。
ここでは、過去にどのような事故が発生しているのか事例をご紹介します。
出典:「高圧ガス事故事例情報シート(神奈川県)」(https://www.pref.kanagawa.jp/documents/15002/551677.pdf)
【1】機械・プラントの劣化事例
●配管の保温材下腐食によるガス漏えい
[事象]
「LPG」入出荷桟橋上の保温(冷)材被覆のLPG揚荷配管(2B)のサポート付近にて、陽炎が上がる。当該ラインを脱圧し、ポータブル式ガス検知器にて漏えいを確認したところ「LEL(爆発下限界)」70%を検知した。
[状況]
事故が起こった配管は、数日前にLPG(ベーパ)と窒素ガスで配管内に滞留した液相を押し出す処理を行っていた。
事故後、当該配管に施工されている保温材を取り外して点検したところ、配管サポート部を中心に保温材下腐食による湿食が進行していることを確認。錆削り後、腐食部に最大で直径7mm程度の開孔部が確認された。
[原因]
CUI(保温材下配管外面腐食)による配管外面腐食であり、漏えい部の配管材質はステンレス鋼などに比べて腐食が発生しやすい炭素鋼(STPL)だった。
さらに、板金の劣化により雨水が侵入しやすい状態で、配管サポート接触部を中心に雨水が滞留し、腐食がより進行したものと考えられる。
●液化アンモニア導管からの漏えい
[事象]
運河上のガス管橋の液化アンモニア導管から、アンモニアが漏えいした。
出典:「高圧ガス事故事例情報シート(神奈川県)」(https://www.pref.kanagawa.jp/documents/15002/421876.pdf)
[状況]
事故後、現場付近を点検したところ、導管の溶接線を中心に約200mmの範囲で外面腐食が確認された。さらに、当該部分の塗装膜のケレン処理により、溶接線近傍の下面に孔食による直径0.8mm程度の貫通孔が発見された。
[原因]
- 設備管理上
運河上の潮風が当たる厳しい腐食環境の中で、結露等により発生した水分が配管下面に集まったこと、漏洩箇所付近の溶接線の周辺部が設置時および 1989 年の再塗装時に、下地処理を十分に行わないまま塗装を行ったため、塗膜の劣化が他の部位に比べて早まったこと、さらにさび等で浮いた塗膜の内側に水分が浸入して腐食が進み、孔食により漏えいに至ったものと考えられる。
- 検査管理上
当該導管はガス管橋の歩廊から離れた位置(図 2)に設置されているため、目視点検が十分に行われなかった。また、腐食環境が厳しいにも関わらず、定期自主点検のポイントに選定されておらず、日常および定期自主点検時には地上から確認する程度であった。
【2】付帯設備の劣化事例
- 付帯設備の劣化に起因する労働災害では墜落や転落、踏み抜きなどが挙げられます。
3. 腐食の要因を把握し、点検精度を高める
2章で紹介した事例から、保全担当者が重要視している箇所以外で事故が起こるケースもあることが分かります。事故を未然に防ぐためにも、構造的・環境的要因を把握し、点検箇所や方法を見直して定期的に確認することが重要です。
付帯設備の事故事例また未然に防ぐための対策については、厚生労働省ホームページの「付帯設備の劣化による労働災害を防止するために」が参考になります。
→ 厚生労働省のホームページ (https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11200000-Roudoukijunkyoku/0000197453.pdf)
また関西ペイントでは、塗膜調査における台帳テンプレートをご用意しております。
点検時により詳細に腐食の箇所を把握することで、事故の防止に繋がります。
ぜひご活用ください。。
4.CUI(保温材下配管外面腐食)による腐食の進行を遅らせる工法を
CUI(保温材下配管外面腐食)対策には、厚膜で水分や塩分の侵入を遮断でき、さらに耐熱できる工法に限定されます。
関西ペイントでは、CUI対策用のサモスター配管用を使用した工法を推奨しています。